(社)日本ギター連盟「ギター音楽祭」参加
 カーネギーホール出演記念 『長野文憲ギターリサイタル』
日時/1993年11月19日
会場/広島市東区民文化センターホール
賛助出演/宮中裕子(フルート) なずみふみよ(ピアノ)
 

〜リサイタルおめでとうございます〜

 長野さんには今年の夏八ヶ岳で行われたギターフェスティバルではじめてお会いしました。
長野さんの演奏はその人柄のままで、あたたか味があり誠実で、聴く人を心の深いところで共感させるものを持っています。今の時代テクニックを持っているギタリストは沢山いますが、 内面的に深みを感じさせる人は、少ないと思います。その意味で長野さんは貴重な人で、これからも是非頑張って いただきたいと思います。
 御成功心よりお祈り申し上げます。

ギタリスト 荘村清志
 

 コンサートや講習会で各地を巡っていると、様々な人に出会う。 長野文憲さんは数年前に若い学生達が集まる清里で知り合い、特に深い印象を与えてくれた人である。
 彼の音楽は、まさにその優しい人柄が滲み出るものだ。クラシックの名曲を弾く時も、あるいは隠し芸の?否/これぞ彼本来の表芸かも知 れぬタンゴやフォルクローレを弾く時も、いつも柔らかく、力まず、自然体であり、自ら奏でるギター、そしてその幸せな聴き手達と共にある。これは実に大変な事だと思う。技術云々を言い出せば、より優れた若手のひしめくであろう音楽界で、悠然と自己の音楽世界を探し 求める彼のおおらかな芸風は実に貴重だ。
 今回は、協奏曲やフルートとの共演である。心から長野さんのリサイタルご成功をお祈りしたい。
 長野文憲〜「音は人なり、また人は音なり」をこれほど感じさせる人 は少ない。

ギタリスト 福田進一
 

長野文憲オン大道芸

 みなさんはクラシック・ギター名手長野文憲氏が大道芸をやったなんて想像できますか?
やりましたよ。昨年の八月六日、広島を訪ねて長野氏に再開し、その玲瓏たるギターの音色を聴いて、横浜野毛の大道芸に出てみませんかと話した。出演料は出ません、投げ銭を腕でとって下さい。
 そしたらギター一挺さらしに巻いて、来ました。柳通りという小路のどじょう鍋屋の前にラジカセに毛が生えたくらいのスピーカーを一つ置いて、隣は手廻しオルガンでシャンソンを歌うフランス女の芸人、客は立ち呑みの生ビールの紙コップを手にした人々の輪の中で、でるわでるわ、「アランフェス」「アルハンブラ」「花祭り」という難曲が超絶技巧の指先にのせて次々に。フランス芸人は「ブラボー」と叫ぶし、中年客がつかつかと近づいて、「兄さん、美空ひばりはやれるかね?」
「できます」と答えて、「悲しい酒」をやっちゃった。すごいのが出ていると評判をとって、その夜、どじょう鍋屋からお座敷がかかり、こんどは流しのギター弾き。文憲さんがカーネギー・ホールに出るというので、本年十月の野毛大道芸には記念して「カーネギー・ホール屋台」を出します。

作家  平岡正明

 

プログラム

J.イベール「間奏曲」
M.カステルヌォーボ=テデスコ「ソナチネ」

A.ユパンキ「こおろぎのサンバ」
E.ファルー「ビダリータ」
A.ロブレス「エル・コンドル・パサ」
I.アルベニス「アストゥリアス」
F.ソル「グラン・ソロ」。

M.カステルヌォーボ=テデスコ「ギター協奏曲第一番ニ長調」。

 前学長のホセ・テホン師の人力によりエリザベト音楽大学にギター コースが設置されたのは昭和51年、そしてギターコース卒業生の数が8名である。ちなみに現役の学生は2名であるが、その中で最も活躍 しているのが長野文憲君である。その活動は範囲は、地元広島だけに限らず、最近は全国至るところにまで広がり、来春3月にはついにニューヨークカーネギーホールにまで遠征するとのことで、まことに喜ばしく思っている。
 長野君個人について言えば、「本当に音楽が好きな人」と言う一語に尽きる。彼はギターのオリジナルだけでなく、南米の音楽や日本の音楽についても大いに興味を示し、演奏に取り上げている。一般の人々にギターのすばらしさを啓蒙して歩く使徒とも言えよう。彼の音楽の特徴は、彼の人柄を良く表していて優しく滑らかで、音色は甘く、リズムは快く、品位ある演奏である。今後のますますの活躍を期待している。

エリザベト音楽大学教授  北林康彦